弁護士 秋山亘のコラム

2016.12.26更新

地主から多額の更新料を請求されたのですが

 

<質問>
 私は、土地を約70坪借りていて来年が更新時期に当たります。 
 この度、地主から更新料として500万円(土地の路線価の5%)を請求するとの通知がきました。
 なお、不動産賃貸借契約書には、更新料に関する取り決めはありません。
<回答>
 賃借人に更新料の支払義務が認められるのは、賃貸借契約書に更新料の支払い義務が明記されている場合など、更新料の合意がある場合に限られます。更新料の合意がない場合でも、その地方に更新料支払いの慣習ないし慣習法がある場合には、更新料の支払い義務が認められる場合もありますが、判例は殆どの事例で慣習の存在を否定しております。
 従って、現在では、更新料の支払い合意が為されていないと、更新料の支払い義務はないと考えてよいでしょう。
 これに対し、地主は、更新料の支払の支払いに応じないと、更新契約を結ばないと言ってくるかもしれません。
 しかし、借地借家法では、地主には、更新を拒否するだけの「正当事由」がないと更新の拒否はできません。この正当事由は、かなり厳格な要件を満たさないと認められない上、通常は多額の立ち退き料の支払を伴いますので、通常は、賃借人は、これまで通り、土地を使用することができます。
 このように借地借家法上当然に更新される更新のことを「法定更新」と言います。
 
「法定更新」とは、借地期間は堅固な建物で三〇年で、それ以外の建物で二〇年となる。この期間内に建物が朽廃すればその時点で契約が終了する。「合意更新」の場合は、右期間より長い借地期間を定めることができ、その期間内に建物が朽廃しても借地権は消滅せず、期間満了まで借地権は存続する
④借地期間が満了しても特別のことがない限り土地の使用権はそのまま認められ、借地人が永遠に土地を使い続けることができるに等しい
とのことでした。
 Aさんは安心しましたが、Bさんとまずい関係になるのも嫌でしたので、自分で妥当と思う金額を更新料として支払うと申し出ましたが、結局折り合いがつかず支払いませんでした。
 以上は借主の立場からの対処ですが、では地主の側に立ち更新料を取得できるようにするにはどの様にしたらよいのでしょうか。とりあえず借地契約に更新料の条項を入れておくことでしょう。注意すべきは、法律上はこのような条項も借地人に不利な条項として、認められない可能性が高いということです。しかし、更新料を契約の条項に入れておきますと、借地人も地主から要求されればスムーズに支払う可能性が高いと思われます。なお、平成八年四月一日以降に設定された借地契約には改正された「借地借家法」が適用されますが、基本的な考え方は従前の「借地法」と同じです。
   

投稿者: 弁護士 秋山亘

2016.12.19更新

放置自動車の対処法

(質問)
私は、あるマンションの管理組合の理事長をしているものです。マンションの敷地の一部を駐車場として区分所有者に貸し出しているのですが、ある駐車場の賃借人が車を放置したままマンションを売却し、遠くの住所に引っ越してしまいました。
放置された車は、型式も10年以上前の車で、事故にあったのか破損状況も激しく、とても使えそうにない車でした。
そこで、私は、賃借人の住民票を区役所で取り寄せて引越先の住所を調べた上、何度も車を処分するよう手紙を出しているのですが、もう半年以上もの間、何も返事がこなくて困っています。
廃車引き取り専門の業者に相談しましたが、車の所有者の同意書がないと後々トラブルになることがあるので、引き取りはできないと言われました。
このまま駐車場を放置しておくわけにもいかないので、明け渡し裁判を提起しなければならないのかと考えていますが、弁護士費用や執行費用を考えると出来るだけ相手方に任意に引き取ってもらいたいところです。
何とか相手方の方で任意に車を引き取ってもらうよい方法はないでしょうか。


(回答)
 このようなマンション駐車場での放置自動車問題に関する相談がよくよせられてきます。
 しかし、このようなケースでも、賃貸人側で無断で廃車処分をすることは器物損壊罪や自力執行の禁止など法に抵触する可能性があります。
 そこで、合法的に処分するには、車の所有者の同意書があるか、若しくは、駐車場明け渡しの裁判をする必要があります。
 駐車場明け渡しの裁判には、それなりに費用(弁護士費用だけでなく15万円~20万円程度の強制執行費用)がかかります。
そこで、車の所有名義人に任意に放置自動車の撤去を促す方法としては、廃棄物処理法第16条違反の罪にあたることを警告する方法が考えられます。廃棄物処理法第16条では、「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と規定されており、同法第25条8号では、第16条違反の罪に対し「5年以下の懲役若しくは一千万円以下の罰金に処する」と定めるなど厳しい罰則が設けられております。 近時は、環境汚染をもたらす悪質な不法投棄に対し、同法違反の罪により逮捕され、厳しく処罰される事案もあります。
 新しいきれいな自動車を単に放置していたと言うだけでは、「廃棄物」を「みだりに捨てた」と言うことはできませんが、本件のように、ボコボコの自動車を長期間放置し、しかも、所有者が遠隔地に引っ越したという場合には「廃棄物」を「みだりに捨てた」と言えますので、廃棄物処理法第16条違反の罪に該当するものと思われます。
 無責任な駐車場使用者も、逮捕される可能性があるとなると話は別だと思われますので、任意に車を処分する可能性は高いでしょう。

(以上)
            
  

       
           
 
          

 

投稿者: 弁護士 秋山亘

2016.12.12更新

私道と税金の法律相談

 

<質問>

私の家の前の道路は私が所有する私道になっています。

駅への近道にもなっているようで、朝晩たくさんの人がここを通りますので、誰でも通れる公道と変わりないように思えます。

それにもかかわらず、私道部分に対する固定資産税納付通知書が毎年きます。

これは何とかならないものでしょうか。

 

<回答>

1 私道に対する公租公課

 私道とは、私人が築造し維持管理している道路であって、通例私人の所有に属します。これに対し、公道とは、国または地方公共団体が築造し維持管理している道路です。

 公租公課の面からみると、私道は、取得する場合は不動産取得税、所有権移転等の登記をする場合は登録免許税がかかります。

また、私道は、固定資産にほかならないので、原則固定資産税が賦課されます。

同様に、都市計画区域内に存在すれば、都市計画税も賦課されます。

 しかし、私道といっても、一般通行の用に供せられていて、公道と同様に交通の役割を担っている道路があります。

また、建築基準法上、道路と認定されると、そこに建築物等を築造することは許されません。

 このように、私道の所有者は一般の土地所有者と比べ、大きな制約を受けます。

2 固定資産税の非課税措置

 固定資産税は、市町村税の普通税であって、土地に関する公租公課の中でも、それを所有しているかぎり、毎年賦課される税金です。

 この点、地方税法348条2項5号によれば、「公共の用に供する道路」の場合は固定資産税を課すことはできないものと規定しています。

そこで、「公共の用に供する道路」とは何かということですが、昭和26年の行政通達によると「所有者において、何らの制約を設けず、広く不特定多数人の利用に供するもの」としています。

 したがって、たとえば、私道の所有者が通行者の条件を設けたり、夜間になると道路を閉鎖したりすると、「何ら制約を設けず」とはいえず、非課税にはなりません。

また、行き止まりの私道のような場合は、その長さにもよりますが、それを囲む建物への来訪者が通行するだけのような場合には「広く不特定多数人の利用」に供しているとはいえず、非課税にならない場合があるでしょう。

 本件の私道は、駅への近道となっていて多数人の往来があるようですから、公共の用に供する道路といえます。

 このような場合、多くの市町村においては「固定資産税の非課税適用届出書」などの用紙を備え置いていますので、この様式にしたがった届出をして非課税措置としてもらうとよいでしょう。

3 その他の公租公課の非課税措置

 都市計画税は、固定資産税と同じく市町村(特別区を含む)が課すことのできる地方税で、非課税の範囲についても、固定資産税と同様な取扱いがなされているので(地方税法702条の2)、上記に述べたことがそのままあてはまります。

 私道を取得する際に賦課される不動産取得税についても、固定資産税および都市計画税の場合と同一の考え方にしたがっており、それが公共の用に供する道路であるときは非課税とされます(地方税法73条の4第2項)。

 以上に対し、私道の登記をする際に必要になる登録免許税は、非課税とはしていませんが、「不動産登記の登録免許税課税標準価格の認定基準」という通達によれば、現況が公衆用道路である場合は「近傍宅地価格の2分の1相当額」をもって、その課税標準価格とするものとされています。

4 私道の公道への編入

 税金をなくすもう一つの方法として、公道への編入という手段が考えられます。要するに、当該道路を公道にしてもらうために、市区町村に対し寄附してしまう方法です。

 もっとも、公道となると道路を維持管理していくために、相応の費用がかかるわけですから、市区町村側でも当然に寄附を受理してくれるわけではありません。

 この点、多くの市区町村では、道路に沿って建物築造が可能となる幅員4メートル以上で、原則行き止まりとなっていない両端が公道に接している道路であることを寄附の受理の要件としているようです。

 公道になれば、その後の道路の舗装費用等についても、私人で負担する必要はなくなるわけですから、この際、市区町村への寄附を検討してみるのもよいでしょう。

投稿者: 弁護士 秋山亘

2016.12.05更新

被害回復型詐欺にご用心     

   
<質問>
 私は、10年ほど前にA社が中心となって会員から投資資金を集めた詐欺事件にあい1000万円を失いました。この事件ではお金を預けた投資会社が行方不明になり、結局、お金は戻ってきておりません。
 その後、B投資顧問会社が中心にとなって設立したという「C匿名組合」の担当者から、「A社による投資詐欺事件の被害を回復するために、当社の顧問弁護士が中心となって、C匿名組合を組織している。出資金200万円を預けてくれれば、当組合の弁護士が責任をもって被害金を回収します。被害金額の全額とまではいかないか、7~8割は戻ってきます。」という電話がありました。
 私としては、どうにかして被害にあった1000万円を取り戻したいと考えていますので、出資金の200万円を預けようかと思っています。
<回答>
近時、上記のような誘い文句で、出資金を募る詐欺事件が多発しております。
これは、過去にあった大規模な詐欺事件の被害者名簿が何らかの理由で流出しており、その名簿に基づいて、かつて被害者であった者から新たに金銭を騙し取ろうという手法です。
この種の詐欺事件の特徴は、①こちらが被害の相談をしていないのに、先方から電話で勧誘してくる、②電話に出る相手は弁護士ではなく、常に会社又は何らかの組織の担当者である、③弁護士が関与している旨を言うが、具体的な弁護士の所属や名前を明らかにしない、④弁護士との面会を経ずに金銭の支払いだけを先に行わせる等です。
確かに、大規模な詐欺事件が発生した場合には、弁護士会、或いは、消費者被害専門の弁護士が弁護団を結成し、その弁護団を通じて被害回復に当たるというのが、弁護士費用の節減又被害回復の実効性の面でも有益です。
しかし、そのよう弁護団は、10年も昔の事件を扱ったりしませんし、前記①~④のような勧誘方法は決して行いません。そもそも被害回復のために出資金を募った「匿名組合」などを組織したりしません。
弁護士法72条では「対価を得て法律事務を行うこと」は弁護士に限られており(訴額140万円以下の簡易な事件については司法書士も受任可能です。)、弁護士以外の者がこうした活動を行った場合には、弁護士法77条により「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」とされ、刑事罰を持って厳しく罰せられます。
したがって、弁護士(又は司法書士)以外の者から、「被害回復のための金銭の支払い」について勧誘された場合には、詐欺の可能性が極めて高いと考えて用心した方がよいでしょう。

(以上)

 

投稿者: 弁護士 秋山亘

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