弁護士 秋山亘のコラム

2016.12.19更新

放置自動車の対処法

(質問)
私は、あるマンションの管理組合の理事長をしているものです。マンションの敷地の一部を駐車場として区分所有者に貸し出しているのですが、ある駐車場の賃借人が車を放置したままマンションを売却し、遠くの住所に引っ越してしまいました。
放置された車は、型式も10年以上前の車で、事故にあったのか破損状況も激しく、とても使えそうにない車でした。
そこで、私は、賃借人の住民票を区役所で取り寄せて引越先の住所を調べた上、何度も車を処分するよう手紙を出しているのですが、もう半年以上もの間、何も返事がこなくて困っています。
廃車引き取り専門の業者に相談しましたが、車の所有者の同意書がないと後々トラブルになることがあるので、引き取りはできないと言われました。
このまま駐車場を放置しておくわけにもいかないので、明け渡し裁判を提起しなければならないのかと考えていますが、弁護士費用や執行費用を考えると出来るだけ相手方に任意に引き取ってもらいたいところです。
何とか相手方の方で任意に車を引き取ってもらうよい方法はないでしょうか。


(回答)
 このようなマンション駐車場での放置自動車問題に関する相談がよくよせられてきます。
 しかし、このようなケースでも、賃貸人側で無断で廃車処分をすることは器物損壊罪や自力執行の禁止など法に抵触する可能性があります。
 そこで、合法的に処分するには、車の所有者の同意書があるか、若しくは、駐車場明け渡しの裁判をする必要があります。
 駐車場明け渡しの裁判には、それなりに費用(弁護士費用だけでなく15万円~20万円程度の強制執行費用)がかかります。
そこで、車の所有名義人に任意に放置自動車の撤去を促す方法としては、廃棄物処理法第16条違反の罪にあたることを警告する方法が考えられます。廃棄物処理法第16条では、「何人も、みだりに廃棄物を捨ててはならない」と規定されており、同法第25条8号では、第16条違反の罪に対し「5年以下の懲役若しくは一千万円以下の罰金に処する」と定めるなど厳しい罰則が設けられております。 近時は、環境汚染をもたらす悪質な不法投棄に対し、同法違反の罪により逮捕され、厳しく処罰される事案もあります。
 新しいきれいな自動車を単に放置していたと言うだけでは、「廃棄物」を「みだりに捨てた」と言うことはできませんが、本件のように、ボコボコの自動車を長期間放置し、しかも、所有者が遠隔地に引っ越したという場合には「廃棄物」を「みだりに捨てた」と言えますので、廃棄物処理法第16条違反の罪に該当するものと思われます。
 無責任な駐車場使用者も、逮捕される可能性があるとなると話は別だと思われますので、任意に車を処分する可能性は高いでしょう。

(以上)
            
  

       
           
 
          

 

投稿者: 弁護士 秋山亘

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