弁護士 秋山亘のコラム

2016.12.05更新

被害回復型詐欺にご用心     

   
<質問>
 私は、10年ほど前にA社が中心となって会員から投資資金を集めた詐欺事件にあい1000万円を失いました。この事件ではお金を預けた投資会社が行方不明になり、結局、お金は戻ってきておりません。
 その後、B投資顧問会社が中心にとなって設立したという「C匿名組合」の担当者から、「A社による投資詐欺事件の被害を回復するために、当社の顧問弁護士が中心となって、C匿名組合を組織している。出資金200万円を預けてくれれば、当組合の弁護士が責任をもって被害金を回収します。被害金額の全額とまではいかないか、7~8割は戻ってきます。」という電話がありました。
 私としては、どうにかして被害にあった1000万円を取り戻したいと考えていますので、出資金の200万円を預けようかと思っています。
<回答>
近時、上記のような誘い文句で、出資金を募る詐欺事件が多発しております。
これは、過去にあった大規模な詐欺事件の被害者名簿が何らかの理由で流出しており、その名簿に基づいて、かつて被害者であった者から新たに金銭を騙し取ろうという手法です。
この種の詐欺事件の特徴は、①こちらが被害の相談をしていないのに、先方から電話で勧誘してくる、②電話に出る相手は弁護士ではなく、常に会社又は何らかの組織の担当者である、③弁護士が関与している旨を言うが、具体的な弁護士の所属や名前を明らかにしない、④弁護士との面会を経ずに金銭の支払いだけを先に行わせる等です。
確かに、大規模な詐欺事件が発生した場合には、弁護士会、或いは、消費者被害専門の弁護士が弁護団を結成し、その弁護団を通じて被害回復に当たるというのが、弁護士費用の節減又被害回復の実効性の面でも有益です。
しかし、そのよう弁護団は、10年も昔の事件を扱ったりしませんし、前記①~④のような勧誘方法は決して行いません。そもそも被害回復のために出資金を募った「匿名組合」などを組織したりしません。
弁護士法72条では「対価を得て法律事務を行うこと」は弁護士に限られており(訴額140万円以下の簡易な事件については司法書士も受任可能です。)、弁護士以外の者がこうした活動を行った場合には、弁護士法77条により「2年以下の懲役または300万円以下の罰金」とされ、刑事罰を持って厳しく罰せられます。
したがって、弁護士(又は司法書士)以外の者から、「被害回復のための金銭の支払い」について勧誘された場合には、詐欺の可能性が極めて高いと考えて用心した方がよいでしょう。

(以上)

 

投稿者: 弁護士 秋山亘

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