弁護士 秋山亘のコラム

2019.07.16更新

中古マンションを購入する際の注意点

 

(質問)

  (1)  この度、中古マンション取引の仲介を行うこととなりましたが、その中古マンションにおいては、管理費・修繕積立金等の滞納があるそうです。このような中古マンションの購入に際して、注意すべき点を教えてください。

  (2) (1)の滞納管理費等ですが、滞納期間が7年を経過しております。管理費等の支払い義務に対しては、時効が成立しているのではないでしょうか。

 (3) また、上記の事例で、滞納期間が長期に渡っており遅延損害金も相当多額にのぼっているのですが、このような遅延損害金も、購入者は支払わなければならないのでしょうか。

  (4) また、管理費等の滞納がある中古マンションを当方が一旦購入し、それを転売するという方式を採った場合、転売後も、購入者が滞納管理費等を支払わない場合、当方の管理費等支払い義務は免れないのでしょうか。

 

(回答)

1  (1)の回答

  中古マンションの購入に際してしばしば問題となるのは、滞納管理費等の支払いに関してです。

 滞納管理費等がかさんでいる中古マンションを競売により落札する場合も、任意売却により購入する場合も、購入者は、区分所有法第8条の「特定承継人」として、滞納管理費等の支払い義務があります。

 従って、仲介人としては、当該マンションにいくらの滞納金があるのかを、マンションの管理会社に問い合わせるなどして調査し、購入者に説明しなければなりません。

 この説明義務を怠ると、仲介業者は、重要事項説明義務違反による損害賠償を請求される場合があります。

2 (2)の回答 

  また、滞納管理費等が長期間に亘り滞納をしている場合には、滞納管理費の支払い義務が時効により消滅している場合があります。

  この時効が成立する期間ですが、これまでは下級審の裁判例として、5年説と10年説に分かれておりました。本件でも、5年説に立てば、過去から遡って2年分の管理費等については、時効により消滅しているとも考えられます

  但し、5年を経過しないうちに、①訴訟が提起されている、②滞納者本人が管理費等の滞納を承認をしている、③滞納管理費等の一部を支払っている、といったケースでは、時効は中断しておりますので、時効は成立しておりません。

  しかし、近時は、10年説に立つ裁判例が相次いでおります(東京高裁平成13年10月31日、東京地裁平成9年8月29日、但し、最高裁判例はありません)。

  従って、この点が争点になり訴訟になった場合には、10年説にたつ判決がでる可能性が高いものと思われます。

3 (3)の回答

  滞納管理費等に対する遅延損害金ですが、これも法律上は購入者が全額支払わなければなりません。

  ただし、購入者が任意に支払うことを条件として遅延損害金の全額免除、一部免除若しくは6%等の低率の遅延損害金への引き直しを求め、管理組合と交渉をするというケースはよくあります。

  管理組合としても、訴訟費用をかけてまで遅延損害金を回収するよりは、低金利の経済情勢を背景にして、遅延損害金の支払いについては、免除に応ずるケースも多くあります。

4 (4)の回答

 本件は、マンションがA→B→Cと譲渡され、Aが所有していた期間の管理費等を滞納していたというケースす。

 当該マンションがAからBへ譲渡されCへ転売される以前の時点では、Bが特定承継人にあたり滞納管理費等の支払い義務を負うのは当然です。

 本件は、その後BからCへ当該マンションが譲渡転売されたことにより、Bは一旦負担した滞納管理費の支払い義務を免れるのか、それとも、Cと共に連帯して滞納管理費の支払い義務を負うのかという問題です。

 この点、大阪地裁昭和62年6月23日は、上記のような事案ではBには支払い義務がないとしています。これを受けて、実務上でも、Bには特定承継人としての支払い義務はないという取扱が一般的となっております。

 もっとも、この点についての最高裁判例は未だ出ておらず、上記大阪地裁判決に対する批判も強い(マンション紛争の上手な対処法・日本マンション学会法律実務研究会編・205頁)ことから、今後最高裁判決が出た場合に異なる判断が下される可能性がある点は付言しておきます。

投稿者: 弁護士 秋山亘

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