弁護士 秋山亘のコラム

2018.05.21更新

返還されない借地には底地売買で対応するのも得策


 Aさんは土地を300坪所有してそこに住んでいました。そして、土地のうち80坪を銭湯を経営しているBさんに貸していました。AさんはBさんに土地を貸してから20年の期限が来るので、明け渡して欲しいと申し出ましたが断られました。これ以降Bさんは地代を供託するようになりました。困ったAさんは弁護士に相談に行きました。
 弁護士は、
①明け渡しが認められるためには、
「契約期間が満了したこと」「借地人が契約期間経過後も使用している場合には速やかに返還請求をすること」「返還を求める正当な事由があること」の三つの要件を全て満たす必要がある。これらの要件のうち「正当な事由がある」と裁判所に認めて貰うのは容易ではない。
②裁判所は、賃貸人が返して貰わなければならない必要性と借地人が継続して使用する必要性を比較して判断する。具体的には、「死活にかかわる場合」「切実な場合」「望ましい場合」「わがままな場合」の四段階にわけて、当事者双方がいずれの段階なのかを見極めて判断する
③AさんとBさんの「必要性」を考えると、Aさんの必要性はせいぜい「望ましい」という段階であり、Bさんの必要性は「死活にかかわる」という段階と考え得る。裁判所で、Aさんに「正当な事由」が認められる可能性は低い
と説明しました。
 しかし、それにもかかわらず弁護士は「土地明渡し」の裁判を起こすことを勧めました。Aさんは弁護士より
①裁判の真の目的は「土地明渡し」ではなく、「土地(底地)をBさんに買って貰う」ことにある
②賃貸人の底地割合(三割)、土地の価格、現在の地代、預金利息などを考慮するとAさんとしては底地を売る方が得である
と説明され、裁判を起こしました。裁判では、土地の値段で難航しましたが、最終的には相応の金額で底地を売買することで和解が成立しました。
 地主は、土地が値上がりしたとしても賃料を上げるのはなかなか難しいのが現状です。また、更新料も法律的な権利とまでは言えません。
 Aさんのように更新時に底地を売却するというのも一考に値するのではないでしょうか。

投稿者: 弁護士 秋山亘

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