弁護士 秋山亘のコラム

2017.01.16更新

遺産分割調停とは

 

<質問>

 父がなくなり、遺産相続をしなければならないのですが、3兄弟間で話し合いがまとまりそうもありません。

そのため、遺産分割調停の申し立てを考えていますが、遺産分割調停とはどのような手続きなのでしょうか。

また、申し立てにはどのような書類が必要なのでしょうか。

<回答>

1 相続財産を分配するには相続人全員の合意が必要になります。

しかし、一般的に遺産には、現金だけでなく不動産、株式、債券などの様々なものがあります。そのため、これらの遺産を相続人全員が、満足できるように分割するのは、大変難しいものです。

これらの遺産の分配方法を相続人全員の協議によって決めるのが遺産分割協議ですが、当事者間で協議がまとまらないときは、家庭裁判所に遺産分割調停の申し立てをすることになります。

遺産分割調停というのは、家庭裁判所の調停委員が、相続人同士の意見や主張を聞きながら、うまく合意できるように進める制度です。

この調停委員は、弁護士など相続事件の専門の方が裁判所から選任されて就任するものなので、当事者の意向を聞き取り、亡くなった人への貢献度、職業や年令などを総合的に判断して、相続人各人が納得できるよう、話し合いを進めます。

また、調停の場合、申立人と相手方が片方ずつ調停室に入り、調停委員に事情を話すという方法で、話し合いが進められていくため、原則として、直接相手方と面と向かって口論するようなことはありません。

このようにして、相続人全員が遺産の分配方法に合意すれば、遺産分割調停が成立し、調停調書が作成されます。この調停調書は、判決と同じ効力を有します。

しかし、この調停でも話し合いの合意ができないときは、「遺産分割審判申立書」を提出して、家庭裁判所の審判で結論を出すことになります。

審判では調停のときのように、相続人同士の話し合いが行われることはなく、通常の裁判と同じように、当事者が主張や証拠を提出し、家庭裁判所が公平に判断して、審判を下すことになります。

この家庭裁判所の審判には、強制力があり合意できない場合も、これに従わなければなりません。

なお、遺産分割では、まず最初に相続人同士で協議を行なうのが前提で、協議もせずにいきなり家庭裁判所の審判に持ち込むことはできません。
2 次に、遺産分割調停の申し立てには、以下のような書類が必要になります。

・遺産分割調停(審判)申立書
・相続人全員の住民票の写しと戸籍謄本
・被相続人の戸籍(除籍)謄本
・遺産目録
・不動産登記簿謄本
・固定資産税評価証明書
・預貯金の残高証明書
・印鑑

このほかに調停の申立費用としては、収入印紙代1200円、通信切手代などが必要になります。

このなかで重要なのが遺産目録で、遺産の取りこぼしがないように作成しなければなりません。相手方が遺産の情報を握っているという場合には、相手方から遺産の情報を開示させて遺産目録を作成する必要があります。

また、戸籍謄本は被相続時の出生時からのものを取り寄せる必要があります。被相続人に認知した婚外子などがいないかを確認する必要があるためです。

3 遺産分割調停の大まかな手続きは以上のとおりですが、実際の相続事件においては、単純に遺産を分ける方法を協議するというだけではなく、寄与分があるか、特別受益(生前贈与など)はあるかによって、各相続人の相続分が異なってきます。

また、遺産の分け方についても、例えば、不動産の価値を何時の時点でどのように評価するかによっても、各人の取り分は大きく異なってきます。

また、どのような遺産が残っているかについても、相手方にしか遺産の情報がない場合には、例えば預金取引履歴の開示手続が必要な場合などもあり、遺産の調査には専門家の協力が必要な場合が多いです。

しかし、調停委員は、あくまでも中立の立場の方であるため、一方の当事者の立場にたって有利な主張や証拠を助言してくれる立場にありません。

そのため、遺産分割調停を申し立てるという場合には、できれば早い段階から弁護士に相談しながら、遺産分割調停を進めていくことをお勧めします。

投稿者: 弁護士 秋山亘

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