弁護士 秋山亘のコラム

2016.07.11更新

迷惑行為による借家契約の解除

    

<質問>

 私は、現在アパートを借りて住んでいるのですが、私の部屋の隣人が、たびたび夜中まで大人数で酒を飲んでは大騒ぎすることを繰り返しており、困っております。私からいくら注意しても何ともなりません。

どうにかならないでしょうか。

<回答>

1 このような迷惑行為に対しては、家主からその相手に対する賃貸借契約の解除が認められる可能性がありますので、まずは、家主に相談してみるべきでしょう。

 すなわち、賃借人は、契約または目的物の性質によって定める用法に従い使用収益をなすべき義務(民法616条、同594条1、用法遵守義務)があります。

 アパートのような共同住宅では、当該建物において隣人との共同生活を行うことが予定されている以上、隣人の日常生活に著しい迷惑を及ぼさないことは、当然に前記の用法遵守義務から導かれる賃借人の義務と言えます。

本件のように深夜に大人数で大騒ぎをすることを繰り返すことによって隣人の安眠を妨げることは、隣人の日常生活に著しい迷惑を及ぼす行為に該当しますので、仮に、これらの行為を繰り返し、家主の注意に対しても、迷惑行為を辞めない場合には、用法遵守義務違反を理由にして契約解除が認められる可能性は高いと言えます。

この点、アパートで深夜のマージャンを繰り返したことにより隣人の安眠を妨げたことを理由に契約解除が認めた裁判例として、東京北簡判昭和43年8月26日(判時538号72頁)があります。

もっとも、賃貸借契約を解除するには「家主と賃借人の信頼関係が破壊された」という事情が必要ですので、1回の迷惑行為によって契約解除が認められるものではなく、複数回の著しい迷惑行為が行われ、家主の注意によっても迷惑行為を辞めないという事情が必要でしょう。

2 賃貸借契約の解除は、基本的には家主しか認められませんので、アパートの賃借人であるあなたとしては、まずは、家主に対し、隣人に対する注意や場合によっては契約解除を求めることになるでしょう。

 では、仮に、家主が隣人に対する注意や解除などの対応も何もしなかったり、或いは、家主が注意をしても隣人が迷惑行為を辞めず、家主としてもそれ以上の契約解除まではしないといった場合は、どうなるでしょうか。

このような場合には、家主としては、賃借人であるあなたに対して、建物の通常の用法に従って建物を利用させる賃貸借契約上の積極的な義務がありますので、隣人の迷惑行為によってあなたの安眠が妨げられるなどの被害を受けている場合には、家主の上記の義務違反を理由に、あなたとしては、家主に対し、賃料の減額請求をすることができると思われます。

投稿者: 弁護士 秋山亘

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