弁護士 秋山亘のコラム

2016.06.13更新

交通事故の示談交渉~その2

 

(質問)

 交通事故の示談金はどのように算定されるのでしょうか。

(回答)

 交通事故に遭ったとき、加害者側の保険会社との間で、交通事故による損害に関する示談金について交渉をすることがあると思います。

 その際には、以下の項目毎に損害額を算定し、示談金総額を決めることになります。

 下記項目の具体的な算定基準は、「赤い本」と呼ばれている「民事交通事故訴訟・損害賠償算定基準」(東京三弁護士会交通事故処理委員会・(財)日弁連交通事故相談センター編)に記載されています。

上記基準は、保険会社の基準よりも各種の損害額が概ね高く設定されており、裁判所も上記基準を採用しております。

 なお、損害金として認められるのは以下の項目に限定されるわけではありません。

原則として、事故に起因する損害はとりあえず全て請求してもよろしいと思いますが、それが裁判上認められるかどうか、上記基準によると具体的にいくらになるのか、或いは、示談の場合には譲歩した方が得策かどうかは、お近くの弁護士にご相談された方がよろしいでしょう。

治療費

自分で支払った治療費は原則として全て請求できます。

但し、温泉療法や特殊の治療法を行う場合には当該治療が必要であるという医師の診断書が必要です。
入院雑費

入院期間中に支払ったテレビ代・書籍代・洗濯代などの諸雑費です。

裁判所基準では1日に付き一律1500円として算定されます。
通院交通費

通院に要した交通費です。足の怪我などでタクシーを利用した場合には領収書を保管してください。
付添看護費

医師の指示書がある場合、その他受傷の程度、被害者の年齢等により付添看護が必要と認められれば支給されます。

職業付添人の場合には実費全額、近親者の付添人の場合には1日につき6500円程度として算定されます。
休業損失

(交通事故前3ヶ月間又は1年間の1日あたり平均収入)×(事故日から職場復帰するまでの期間の休業日数)で算定されます。

主婦など現実に収入がない場合にも、家事労働に従事できなかった期間は一定の割合で支給されまます。
入通院慰謝料

入院期間と通院期間により算定されます。

例えば、裁判所基準では、20日入院、通院期間2ヶ月(実通院日数16日)の場合、入院1ヶ月・通院2ヶ月として算定して

122万円となります。
後遺症による慰謝料

後遺症として等級認定されれば、認定等級に応じて、上記⑥の通院慰謝料とは別に後遺症そのものに対する慰謝料が支給されます。
後遺症による逸失利益

後遺症として等級認定されれば、当該等級、労働能力喪失率、事故時の平均収入、今後の就労可能年数に応じて、算定されます。
物損

修理可能な場合には修理費用、全損で修理不能な場合又は修理費用の方が再購入費用よりも高くつく場合には、同等の中古車の再取得費用を請求できます。

その他レッカー代、代車費用、高級車の修理評価損なども請求できます。
遅延損害金・弁護士費用

裁判所基準によると、遅延損害金は、損害額に対し事故日から損害金の支払日まで年5%の割合による遅延損害金が、弁護士費用は、損害額合計に対し1割程度が認定されます。

但し、裁判外の示談や和解の場合には、支給されない場合の方が多いです。
過失相殺

当該事故発生について、被害者側にも落ち度がある場合には、当該落ち度に応じて、損害賠償金額が何割という一定割合で減殺されます。

事故態様・事故パターンに応じた裁判所の基準があります。

損害賠償金に大きく影響するので過失相殺の割合は重要です。
損益相殺・既払金控除

労災支給の休業損害金や自賠責保険からの保険金など既に支払い済みの損害賠償金は控除されます。

被害者が自ら傷害保険に加入していた場合の保険金は控除されません。

 

損害の項目として挙げられるものは概ね以上の通りです。

なお、上記のうち、通院慰謝料、後遺症慰謝料、後遺症による逸失利益など損害額は、数百万円から数千万円と高額になる場合があります。   

人身事故の場合には、示談をする前に少なくとも一度は、示談金額が相当なものかをお近くの弁護士に相談されることをおすすめします。

投稿者: 弁護士 秋山亘

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